not guilty

鹿児島で修習をしていて、弁護・検察・裁判所・警察の各立場から事件を見させてもらった死刑求刑事件に無罪判決が。

公判開始前に和光に来てしまったのでムリだったが、ぜひすべて傍聴したかった!

以下、asahi.comの記事より引用。被告人の氏名は伏せた。
http://www.asahi.com/national/update/1210/SEB201012100004.html

鹿児島市で昨年6月、老夫婦を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われた無職××被告(71)の裁判員裁判で、鹿児島地裁は10日、死刑の求刑に対し、無罪判決を言い渡した。平島正道裁判長は「(検察の主張には)犯行の目的、逃走経路など重要な部分で疑問を挟む余地がある。本件程度の状況証拠で被告を犯人とは認定できない」と理由を述べた。死刑が求刑された裁判員裁判で、無罪判決が言い渡されたのは初めて。

(中略)

 判決は、現場に残された被告の指紋から、「被告が過去に周辺をさわった事実は動かない」としつつ、「後から別人が物色した偶然の一致も否定できない」と述べた。凶器とされるスコップに被告の指紋などがないことや、被害者が激しく殴られている状況などから「金品目的」で侵入したとする検察の主張に疑問が残ることも指摘。「『被害者宅に行ったことは一度もない』という被告の供述はうそだが、その一事をもって、直ちに犯人であるとは認められない」と述べた。

 その上で「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に沿い、無罪を導いた。

 起訴状によると、××被告は昨年6月18日夕から翌朝にかけて、蔵ノ下忠さん(当時91)方に金品を奪う目的で侵入し、忠さんと妻ハツエさん(同87)の頭や顔をスコップで殴って殺害したとされる。

 今回の事件では、自白などの犯行に直接結びつく証拠はないため、立証は間接証拠の積み重ねとなった。検察側は、侵入経路とされる網戸から採取された細胞片のDNA型や物色された整理ダンス付近の指紋などが被告のものと一致したとする点を挙げた。

 そのうえで、最高裁が死刑選択が許される基準として示した「永山基準」に沿って「命を犠牲に金品を奪おうとした動機は厳しく非難される」「殺害方法が残虐」と指摘。遺族の強い処罰感情などを踏まえ、死刑を求刑した。

 弁護側は現金や貴重品が現場に残り、スコップから被告のものと一致する指紋などが出ていないことから、「恨みを持つ別人の犯行」と反論。「指紋などは偽装工作の可能性がある」として、検察側の立証について「合理的な疑いが残る」と批判していた。

 公判では、弁護側が検察側の多くの証拠に同意しなかったため、鹿児島県警の警察官ら計27人の証人が出廷。裁判員裁判としては初の現場検証も行われた。評議も最長の14日間だった。

 これまでの裁判員裁判では死刑求刑が5件あり、4件が判決に至っていた。横浜、仙台、宮崎の各地裁で死刑が言い渡された(横浜と仙台は被告側が控訴)。東京地裁無期懲役だった。

     ◇

■判決の骨子

・DNA型鑑定の結果は信用できるが、被告が過去に網戸を触ったと認められるだけだ

・ガラス片の被告の指紋は、割れた後に付着したとは断定できない

・整理ダンスの指紋から、被告が過去に触った事実は動かないが、別人が物色した偶然の一致も否定できない

・凶器のスコップから被告の痕跡がまったく検出されず、被告の犯人性を否定する

・結局、被告が過去に網戸や窓ガラスの外側、整理ダンスに触ったと認められるにすぎず、犯人とは推認できない

・これらの状況証拠から被告を犯人と認定することは、「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則に照らして許されない


(またね!)