[ごあいさつ] 修習終了 (and I did it my way)

『解釈と鑑賞』という誌題の国文学雑誌がある。修習生はまさに実務家たちの舞台を桟敷席から解釈し鑑賞することにふけってきた。しかしそのオママゴトも今日限りで退席となり、自己の署名押印により発生する責任は天文学的に増加する。いよいよですゾ。ここ…

once you cross the border there is no way back

ローの同期が夫婦で泊まりにきたり、せっせと餃子をつくってもてなそうとしたり。仙台の記者と珈琲をすすりながら鬱々とした話をしたり。「俺はやるぞ、やってやるぞ」という気分になったり、「果たして」ふと我にかえり、「俺はやれるのか?」という気分に…

not guilty

鹿児島で修習をしていて、弁護・検察・裁判所・警察の各立場から事件を見させてもらった死刑求刑事件に無罪判決が。公判開始前に和光に来てしまったのでムリだったが、ぜひすべて傍聴したかった!以下、asahi.comの記事より引用。被告人の氏名は伏せた。 htt…

あれから。

博多から戻り、横浜検疫所にて黄熱病の予防接種を受ける。年末のタンザニア旅行のための任意的ワクチン。蚊を媒介とする病気は現地にズラッとあるのだが、有効かつ容易な対抗手段をとれるのは黄熱病だけである。だから黄熱病対策だけでは、安心感は大して増…

それから。

海外に出かける同期も多い中、国内でうろうろこまごまと。 - 先月末に和光の寮を引き払って寝ぐらをひとつ失い(ディケンズ的な陰鬱空間にラスコーリニコフ的な抑圧青年がうろついてるとこ、という先入観は誤りで、楽しい寮生活だった)、鹿児島に戻って関係…

最後のダンスは私にとっておいて

下品で申し訳ないですが。阿川尚之サンのジョージタウン大学ロースクール留学記のなかに、「法律の試験なんてのは壁にクソをたくさん投げつけて、そのクソがどんぐらい壁にくっついたかを競うようなもんだゼ」というむこうの学生の発言があったんですがネ(…

つづれタイヤキくん

まいにちまいにち僕らは鉄板の上で焼かれてイヤんなっちゃうよ。はやく広い海で泳ぎたいもんだ、あともうひとつづり! (またね!)

縦走もあと峰ふたつ

「事案のへそを押さえろ」という刑弁教官の助言を尊重したわけですよ、マジメで純朴なワタクシとしては。「刑弁なんてメルクマール覚えときゃいいっしょ」という多勢の語呂合わせ軍団に背を向け、最近は自分や他人のへそをしげしげと観察して、十人十臍、特…

あと三つの辛抱

『隋の煬帝』(宮崎市定、中公文庫)を週末に読んでいたので、一族皆殺しや大盗賊団、何万人の屍山血河にボンヤリしてしまう。殺されるから殺す、なんとなく殺す、殺す理由がないからこそ殺す、そんなのに慣れてしまい、和光にそぐわない大陸的思考でのぞん…

さよならケイ子

試験官にブルッてしまった。うちの部屋、(不必要に)厳しいゼ。 - A班で修習してたローの友人たちに会って若干テンションが上がる。便所での会話に過ぎないとしても。ま、なんにせよ、あと四科目。引き続き、めんどくさい。 (またね!)

シーソーゲーム

今月上旬に新64期予定者たちと三日つづけて飲んだとき、彼・彼女らはどっぷり貸与制気分だった。修習地での新居をどこにするかという話をしてて、こちらがうっかり「あ、住居手当ないの?」と言おうものなら、「当たり前です!」とピシャリ。目が怖かったな…

ゾウさんが好き、でもカメさんのほうがもっと好き

おっし奄美大島で即独すっか!と妄想していた半年前、事務所の名前をアレコレ考えるのが楽しかった。「マングローブ法律事務所」「ハブ、マングース&ブラックラビット法律事務所」あたりが有力候補として勝ち残ったが、知り合いの事務所職員や弁護士会職員…

風狂の旅

友人の部屋に糊を借りに行ったら缶ビールも渡されて、落合フクシくんの結婚を祝して乾杯する。 - 酔いがさめるまでの間に角川ソフィア文庫で松尾芭蕉『おくのほそ道』を読む。片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず、弥生から長月にかけて、江戸を発して松島…

落葉ふむ

寮の鹿児島同期らと体育館でバドミントンを心身ともにへたばるまでやり、宅配パエリアをにぎやかに食べる。彼らとの日常的友好関係もそろそろ終わりだなあ。 - 木曜の昼休み、粗餐後のけだるい気分のなかで、何気なさを装う感じが伝わらなくもない程度の何気…

真なりや贋なりや

せまりくる試験の圧力と。流行る風邪の足音と。コケたときに失うものの重さと。見渡すかぎりの修習生たちと。そんな環境のなかで、ときにささやかれ、ときに喧伝されるあやしい情報。情報の内容は、主に試験問題の内容・採点基準等。そして情報の根拠は、某…

波をチャプチャプかきわけること

民族移動についての自説を検証するために筏で太平洋を横断する『コン・ティキ号探検記』。アラスカに定住した星野道夫のエッセイ。あと、開高さんが大阪の泥棒部落をコッテリ書いた『日本三文オペラ』。そんな活力溢れすぎの話を最近は読んでたので、ちょっ…

恋は起案の外

昨日は刑裁起案、本日は民弁起案。両日とも起案終了後は(実にサエない出来!)、体育館で卓球やバトミントンをして戯れる。任官志望者に誘われたら断れんですヨ。そして彼を卓球で打ち負かすのですヨ。鹿児島ではもっと互角だった気がするのだが、彼のプレ…

漠然たる起案

二回目のワコール秋の起案祭りがはじまる。本日は検察起案。前回は余りに不出来だったらしく、わがクラスはAとBがゼロという処置をいただいた。 教官がグレてしまわないように再起を誓ったはずが、各員の奮闘の結果はあまり思わしくない様子。個人的にも終…

低頭思故郷

起案の講評を終日うけて、からだクタクタ、気持ちクサクサ、もはや椅子の上に尻を乗せることも厭悪して午後6時に寝る。さすがに深夜に目が覚めて、外の空気を吸いに出ると、いくつかの窓は煌々と光っており、ムム、励んでいるのだナ、と思わされる。もし給…

不健康だが文化的なまずまずの生活

鹿児島のころは近所にジュンク堂もあり、本を漁りやすかったが、寮に来てからはいかんせん出不精になりがち。読んでない白表紙は犬に食わせるほどあるけれど、まず長時間は相手をできない。ということで、部屋をわたりあるいて、使用貸借をしていくことにな…

気持ち新たに

そろそろ二回試験が迫ってきたことを認めることを誓う。 はじっこで耳をほじった綴りヒモを使って起案を提出せぬことを誓う。 同期の女性関係に茶々を入れすぎぬことを誓う。 研修所の防犯カメラがハリボテでないことを忘れぬことを誓う。 寮のロビーで週刊…

whatever will be, will be

サイ太:夜の樹林公園は暗くて人もまばらでいい雰囲気だね。こうして夜の散歩を楽しめるのも寮生活ならではだね。ケイ子:確かにそうね。虫の声もいい感じだわ。任官志望のわたしたちもたまには息抜きしなきゃ。ところでさっきの続きだけど、公判前整理にお…

起案周辺

時間が限られ、参照できるものもわずか、合議もできず、せこせこ手書きで、初見の記録につき机にかじりついて無言で書き上げる。これが実務に近似した作業とはもちろん言えぬだろう。司法試験のときも思っていたが、こういう「鼻からスパゲッティを食う」よ…

玉、砕ける

ローの同組のお通夜に行く。フットサルでの強い体当たりが印象深い。生きているということは、腹が減るということであり、些事に悩まされるということであり、先立つ者を見送るということである。掌を合わせる。頭を垂れる。 (またね……)

漂えど沈まず

未修クラスの合格者祝勝会を新宿で。鹿児島へのホームシックも一段落し、群衆も都会的サービスも違和感を感じなくなる。 - 息災かい。秋の訪れは心地よいが、こちらの座学はツラいゼ。小学校のころは立ち歩いた。中高生のときは教室の深部で麻雀に興じたりミ…

帰去来辞

金曜夜は弁護士会による酒池肉林の宴。結婚祝いとして指導担当から薩摩切子のグラスを一対いただく。たなごころに職人芸をのせる悦び。たとえば。芋でも。黒糖でも。焼酎のロックをグラスの縁に氷を軽く当てながら傾け、その酒精の閃きと切子の輝きを触媒に…

こしきゆかし

「証拠がすべて」という言葉を検事から聞いたとき、その職業に対する一種の尊敬の念に打たれたことを覚えている。改ざんという禁じ手を使えば「すべてが証拠」となる。最低限の倫理と信頼関係が刑事司法の基礎にあることを再確認する。 - 連休は一泊で甑島へ…

MVPは被告人役

引越し準備。本や服の箱詰めに着手。 - 模擬裁判は、あちらに宇野がいればこちらに達川アリという感じで、珍プレーが頻出した。結論は有罪だったが、引き続き野球にたとえるなら、1点ビハインドの9回裏2死2、3塁からヒットが出て、2塁走者がこけつまろ…

つわものどもの息づかい

県警修習の裏では、模擬裁判の手続が粛々と進行していたのである。今日から検察チームに復帰すると、何やら修羅場の様子。あれもできてない、これも詰めてない、それもんどいて、適当に落とし込んどいて、いまちょっとバタバタしてるんで、等と指示や報告が…

プロはプロの仕事を

弁護修習やっても、依頼者と2人きりになって「で、うちの先生の仕事、どうすか?」なんて聞けないので、あまり依頼者目線を学ぶ機会はなかった。鉄槌! (角川文庫)作者: いしかわじゅん出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2003/10メディア: 文庫 クリック: 17…