『金花黒薔薇草子』

金子光晴 金花黒薔薇艸紙 (小学館文庫)

金子光晴 金花黒薔薇艸紙 (小学館文庫)

グレートな詩人、金子光晴がひたすらエロ話をする本。

個人的には、彼の詩よりも戦前の放浪時代を記した自伝的三部作『マレー蘭印紀行』、『どくろ杯』、『ねむれ巴里』が好きなんですが、こんな素敵な本があったとは知らなかったなあ。ありがとう、近所のブックオフ

彼独特のネチャネチャしたエロ、陰惨に落ちない無邪気なエロ。死ぬ間際まで性に執着しているところがスゲエジジイだ!と感服させられる(80才になって「不立」になっても、女体が好きで好きでたまらないのだ)。

でも、死ぬ間際まで続いた連載をまとめているので、体調の悪さや、幽明の境が曖昧な表現に、ときおり、胸が詰まる。

途中、妙齢のご婦人から受けた色道の奥儀あれこれを描写するとき、ちょっと立ち止まる。

「うん、刑法175条てえのがあるからねえ。邪魔だねえ、この猥褻罪てえのは。ナニ、刑法なんかかまやしねえ」

といってまたネチネチと語りを再開する。

昭和49年か50年だから、『四畳半襖の下張』事件の第一審が係属していたのだろう 。

この本は立派な猥褻「財」である。



(またね!)