『金花黒薔薇草子』
- 作者: 金子光晴,桜井滋人
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/06
- メディア: 文庫
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グレートな詩人、金子光晴がひたすらエロ話をする本。
個人的には、彼の詩よりも戦前の放浪時代を記した自伝的三部作『マレー蘭印紀行』、『どくろ杯』、『ねむれ巴里』が好きなんですが、こんな素敵な本があったとは知らなかったなあ。ありがとう、近所のブックオフ。
彼独特のネチャネチャしたエロ、陰惨に落ちない無邪気なエロ。死ぬ間際まで性に執着しているところがスゲエジジイだ!と感服させられる(80才になって「不立」になっても、女体が好きで好きでたまらないのだ)。
でも、死ぬ間際まで続いた連載をまとめているので、体調の悪さや、幽明の境が曖昧な表現に、ときおり、胸が詰まる。
途中、妙齢のご婦人から受けた色道の奥儀あれこれを描写するとき、ちょっと立ち止まる。
「うん、刑法175条てえのがあるからねえ。邪魔だねえ、この猥褻罪てえのは。ナニ、刑法なんかかまやしねえ」
といってまたネチネチと語りを再開する。
昭和49年か50年だから、『四畳半襖の下張』事件の第一審が係属していたのだろう 。
この本は立派な猥褻「財」である。
(またね!)