語学堪能なハヤカワさん

旅行中になんとなく本屋で手に取った「ハヤカワ文庫の100冊」のパンフレットがいい出来だったので、10月はハヤカワさんを軸とした偏りのある読書となりました。

10月に読んだおすすめハヤカワさんは以下の7冊。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

おとなしいアメリカ人  ハヤカワepi文庫

おとなしいアメリカ人 ハヤカワepi文庫

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

第三の男 (ハヤカワepi文庫)

第三の男 (ハヤカワepi文庫)

アゴタ・クリストフ出世作となったこの三部作、ちょっと凝った構成ですが、主人公の持つ乾いた残酷さが要所で引き締めていいですね。

グレアム・グリーンの『おとなしいアメリカ人』は開高健ベトナム関連本にもチラっと出てくるので、前から読んでみたかったのですが、良い本でしたね。ジャーナリスト出身の作家は、ちょっとした事実のもつ面白みを効果的に使える人が多い気がします。

ちなみに、このブログのタイトルは『おとなしいアメリカ人』からとりました。筆者自身は「おとなしい」と称されることは皆無ですが、ま、本を読んでいただければ含意が伝わると思います。

ヒューマン・ファクター』は地味なスパイ物ですが、イギリス風に地味すぎてグッド。ソ連に亡命とか、何だかずいぶん昔の話に思われますね。『第三の男』も、戦後の分割統治のコネタが妙に光りました。いまはグリーンの『権力と栄光』を読み始めています。信仰のからむ作品は苦手なのですが、メキシコ革命終期のカトリック迫害のエピソードに力があり、てくてく読めそうです。

『あなたに不利な証拠として』は、あまりそそらないタイトルですが、非常に良かったですね。アメリカの元女性警官が著者なのですが、職務時代のエピソードをもとにした連作集となっています。けっこうブックオフに売ってます。

ちなみに、買ったけど投げ出したハヤカワさんは、『華氏451度』。著名な作品なんですが、やっぱりSFは向いてないようです。『セックスとニューヨーク』(Sex and the Cityの原作)は、何かが著しく減退する気がして放棄しました。

あと、ちょっと前にはまっていたヘリオット先生もハヤカワさんでしたね。

ヘリオット先生奮戦記 上 (ハヤカワ文庫 NF 76)

ヘリオット先生奮戦記 上 (ハヤカワ文庫 NF 76)

イギリスの田舎で獣医をしていた著者が、動物や人間の織り成す泣き笑いをたくさんの小話としてまとめているのですが、司法試験の勉強のよい句読点となりました。

ヘリオット先生のシリーズは、集英社文庫ちくま文庫からも出ているので、10冊くらい集めましたが、質の高い仕事ぶりです。動物が好きな人、動物が好きな人間が好きな人、イギリスの田舎の景色が好きな人、一度いったことをすぐ忘れる上司を持つ人には、イチオシです。

なんかだんだん10月の読書と関係なくなってきましたが、ロースクールを目指す人に必ずすすめるハヤカワさんは、コレ。

ハーヴァード・ロー・スクール (ハヤカワ文庫 NF (114))

ハーヴァード・ロー・スクール (ハヤカワ文庫 NF (114))

いまでも読み返したくなる箇所がチラホラあります。

野心的な人には、コチラ。

リビング・ヒストリー 上―ヒラリー・ロダム・クリントン自伝 (ハヤカワ文庫 NF)

リビング・ヒストリー 上―ヒラリー・ロダム・クリントン自伝 (ハヤカワ文庫 NF)

リビング・ヒストリー 下―ヒラリー・ロダム・クリントン自伝 (ハヤカワ文庫 NF)

リビング・ヒストリー 下―ヒラリー・ロダム・クリントン自伝 (ハヤカワ文庫 NF)

いまのヒラリーさんは権力者の顔になってますが、本の中では人間的魅力がたっぷり。

最後に、がぜん気になるハヤカワさんは、ハルキに合わせたのか新訳版の登場したコチラ。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

旧訳版は持ってるのですが、この本、読むのが疲れるので新訳に手を出すかどうか。畳とナントカと違って、訳文は「新しいほうがいい!」とは言えないので。

1984』は陰気な内容で、イギリスでも挫折者の多い本として知られるようですが、このまえ、電車でこの本をむさぼり読んでいる小学生がいました。さきゆき恐ろしいですね。『1984』でオーウェルぎらいが増えないために、コチラを強力にプッシュしておきます。

動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

あ、この本はハヤカワさんじゃなくてカドカワさんだった……


(またね!)